12月30日は「地下鉄記念日」です。「地下鉄記念日」に関係するトピックスを紹介します。朝礼やその日のネタにでもなれば幸いです。
地下鉄記念日
「地下鉄記念日」は、1927年(昭和2年)12月30日に、上野から浅草までの2.2kmで、日本で初めて地下鉄が開業したことを記念して制定されました。
1925年(大正14年)の9月に工事が開始され、2年3ヶ月で完成しました。開業当日には、もの珍しさもあって、一日で10万人に近い人が乗車したと言われています。当時の運賃は10銭均一でした。この地下鉄は現在の東京メトロ銀座線にあたります。
日本初の地下鉄が開業されるまで〜日本の地下鉄の父「早川徳次(はやかわのりつぐ)」〜
1927年(昭和2年)12月30日に、日本で初めて地下鉄が開業しました。これには、ある1人の実業家の熱い思いがあって実現されました。その人物の名は「早川徳次(はやかわのりつぐ)」。「日本の地下鉄の父」とも言われています。この地下鉄開業までの道のりをご紹介します。
早川徳次は1881年(明治14年)に山梨県東八代郡御代咲村(現在の笛吹市一宮町東新居)で生まれました。父は御代咲村の村長を務めた「早川常富」で三女四男の末子として生まれます。兄には山梨県会議員を務めた「早川富平」、笛吹川廃河川を開拓したことで知られる「小松導平」がいました。
甲府中学を卒業後、早稲田大学に進学します。もともとは父や兄と同じように政治家志望でしたが、次第に鉄道事業を志すようになり、南満州鉄道(満鉄)総裁を務めていた後藤新平に師事し、満鉄に入社するも後藤の退社により退職、鉄道院(国鉄)の現場職員となりました。
その後、妻の叔父である「望月小太郎」から、東武鉄道の二代目社長にもなる同郷の「根津嘉一郎」を紹介されます。これが、徳次にとって鉄道と本格的に関わるようになるきっかけとなりました。東武鉄道の根津嘉一郎に見出された徳次は、佐野鉄道(現在の東武鉄道佐野線の一部)や高野登山鉄道(現在の南海電鉄高野線の一部)の経営を任せられ、その能力を発揮します。
そして、高野登山鉄道の職を辞したあと、海外の鉄道事情を視察するために1914年(大正3年)に、イギリスのロンドンへ向かいました。この視察こそが、日本初の地下鉄開業のきっかけとなります。視察のもともとの目的は、鉄道と港湾の調査でした。しかし現地で見た地下鉄に驚かされた徳次は、そちらの調査を棚上げにしてまで、地下鉄の調査を行いました。1916年(大正5年)年9月の帰国後、さっそく東京に地下鉄を建設すべく動き始めます。
初めは公共交通として鉄道省や自治体に建設を働きかけたものの、"東京の軟弱な地盤の地下に構造物を建設することは、技術的・資金的に無理"、''事業として成り立つか不透明"との理由でその徳次の先見性は理解されませんでした。そこで、徳次は街頭に立ち、ポケットの中に入れた豆を使って通行量の調査をし、東京のどこを多くの人が通るかを調べ、浅草から新橋へとルートを定め、その結果から事業として十分成り立つこと立証しました。また、東京の軟弱な地盤は地表から210メートルから240メートル程度に過ぎず、その下には固い地層があることを確証します。
ついに、1919年(大正8年)11月17日に、鉄道院から地下鉄道免許を「東京軽便地下鉄道」として取得に成功します。1920年(大正年)8月29日には東京地下鉄道株式会社が設立され、社長には工学博士の古市公威が就任、取締役には根津嘉一郎、徳次は常務取締役に就きました。そして、1925年(大正年)9月27日に、浅草 - 上野の地下鉄工事を開始します。1923年(大正12年)に発生した関東大震災の影響を受けたり、建設工事も難工事の連続で何度も事故が起きたりするなど、数々の困難がありましたが、1927年(昭和2年)12月30日、やっとのことで日本で初めての地下鉄が、浅草駅から上野駅までの区間で開業しました。
路線は延伸を続け、1934年(昭和9年)3月には銀座、そして同年の6月には新橋まで達しました。1939年(昭和14年)年1月には、東京横浜電鉄の東京高速鉄道が、渋谷から伸ばしてきた路線を新橋まで開業し、同年9月には両社の直通運転が始まり、今の銀座線の形が誕生しました。その後、両社の事業は新設された帝都高速度交通営団(営団地下鉄)に譲渡されることが決まり、徳次は地下鉄事業から撤退します。
地下鉄事業から撤退した徳次は、故郷である山梨県に帰郷します。そこで、かねてから考えていた、郷里における人材育成のため在職中から早川家の生家地内に「青年道場」を作る計画を実行しようと動き始めます。しかし、道場の建設も進んでいましたが、完成を見ることなく東京の自宅で亡くなりました。
今では、銀座駅の日比谷線中2階メトロプロムナードの中央部に、早川徳次の胸像が立っており、「地下鉄の父」として語り継がれています。